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  歴史  
    初期のチベット医学
紀元前5・6世紀に、有名なチベット医学者“チェプチュシ”が現れました。本教史の記述によれば、「チェプチュシは 教開祖シーリューの長男で、王様の侍医をしたことがある」とあります。彼は当時民間の医療経験をまとめて《医学九法》《療法月光》などの著書を残し、チベット医学の臨床実践経験を総括しました。

その後、多くのチベット医学者が現れましたが、当時の人々は、様々な自然現象を徹底的に理解することが不可能であったため、自然の力は病気の根源だと信じ、ボン教の巫術と医学が共存するという情勢がありました。




   
    チベット医学と漢方医学、インド医学
西暦641年、文成公主皇女が吐藩(後のチベット)へと嫁ぎ、唐と特別な関係を結びました。その結果、吐藩はさらなる発展と繁栄を手に入れました。このことから、漢方医学の観点も吸収したのは明らかであり、漢方医学がチベット医学全体の発展について何らかの影響を与えたと考えれます。

アーユルヴェーダがインドからチベットに伝わったのは、5世紀末の ラトトリー時代に遡ります。ソンツェン・ガムポ王以前は、いくつかの治療方法しかありませんでしたが、8世紀中頃、古インドアーユルヴェーダ医学の《八支精要》をチベット語に翻訳したことが、チベット医学理論体系の発展に影響をもたらしました。このような歴史から、チベット医学は、アーユルヴェーダの内容を多く吸収しているため、チベット医学とアーユルヴェーダが似通っているという現象はあっても、チベット医学の源はインドだという考え方は誤りであると考えられます。

   
   

チベット医学の発展
チベット医学は、7世紀中頃のティソン・デツェン時代から独自の理論システムに発展しましたが、それ以前は感性的認識や経験の積み重ねからのレベルで、理論体系は完全ではありませんでした。
初期チベット医学理論著書《月王薬診》は、おそらくティソン・デツェン時期に書かれたものですが、チベット人民の長年にわたる医療経験を基礎とし、他民族の医学知識を吸収して編さんされたものです。内容は、医学と薬学を組み合わせた形式で、チベット医学の解剖と生理・病理・薬理など、各方面の基本理論が論述されています。また、780種の薬材の各種性質・味・効果及び処方や調剤まで細かく記述されており、この時代の医学典籍はチベット医学が新しい時代に入ったという証で、ほぼ完璧にチベット医学の基礎理論を記述したものでした。

古代チベット医学外科手術用具人体解剖については、食物からの栄養、血、肉、脂肪、骨、骨髄、精液及び経血の“七つの物質要素”は人体構造の基礎であるということ、生理と病理については、「ルン、チーパ、ペーケン」の“三要素”学説を核とした理論システムが確立されました。チベット医学の“七つの物質要素”“三要素”の学説は古代ギリシアの“七つの基礎要素”“三種の活力”の原点と合致しており、これについては更なる研究を行う価値があるでしょう。 【参照⇒「チベット医学理論」

もうひとつの成就は、いろいろな民族の医学、知識を吸収し、それを基礎としてチベット医学独自の「脈診」を確立したことです。これらの臨床実践は、チベット医学の完全な理論システムの確立と発展の基礎を築きました。

   
    チベット医学の確立
四部医典(ギューシ) 当時の医療実践に基づいた《月王薬診》等、古典医学書物に次ぎ、8世紀中ごろに有名なチベト医学者“ユトク・ユンテングンポ”が、初期医学経典を研究し、まとめたと共に、隣民族の先進医学を学びました。およそ10年間努力を重ね、チベット医学の経典《四部医典(ギューシ)》を編さんしました。《四部医典(ギューシ)》の現れは偶然的なものではなく、人民の長年の医療実践と、他民族の医学知識を吸収したことの結果であり、この本の“後続タントラ(章)”に「《四部医典(ギューシ)》は多くの他医学を研究、吸収して著作された」と記述されています。これが、チベット医学の理論システムを確立し、チベット民族の繁栄と健康にきわめて大きな貢献しました。

また、著名なチベット医薬学者デェマル・ダンズンプンツォが青海省東部と南部、チベット自治区の東部と四川省西部にかけて、二十年あまりの実地調査や研究を重ね、1835年に著作した《晶珠本草》は技術レベルと科学的証明等いかなる面から見ても当時の最高レベルに達しており、国家の経典医学著作の一つとして称されています。


チベット医学タンカ
チベット医学タンカ チベット医学のタンカ(医学掛け図)は全部で80図あり、4,900ほどの内容(小図)で構成されています。生き生きとした図で「ギューシ」の内容が全て描かれています。このタンカはチベット医学が初めて作ったものであり、世界の他の伝統医学にも例のないものです。


   

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